Happylight 鎌倉 加美尾花

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1993 Angkor 2018 暑中お見舞い申し上げます




暑中お見舞い申し上げます。
記録的な酷暑が続いております。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
くれぐれもご自愛下さいませ。



こんな日々には、ふたつの遠い異国での事を思い出す。
遠い、といっても、それは物理的な事ではなく、
時間的、記憶的な意味で、、、

ひとつは1980年のクタ。
それと、93年のシュムリアップ。

クタでは肌を炎で炙られているような暑さを。
シュムリアップでは体内の臓器や血液が茹だる様な、、
そんな暑さだった。


93年のカンボジアは内戦が終結し国連の暫定統治機構が
国の運営を担っていた。
1970年以降、93年ころまでは、行きたくても行けない国だった。
そんな時に旅をした話。

当時のこの国では、白い車体にUNの青いマークをつけたランクル、
兵士を乗せたカンボジア国軍のトラックがやたら走っていて、
何十万も人が住んでいる一国の首都であるプノンペンでさえ、
夜の帳が下りると漆黒の闇に包まれた。

プノンペンで老人の漕ぐシクロを拾った。
シクロの車体が軋む音、犬の遠吠えしか聞こえない闇の街。
時折視界に入るぼんやりと滲む電球の灯り。
まるで深海を浮遊するようにシクロはゆっく~り進む。

今では大盛況なアンコールワット遺跡群さえも、
当時は訪れる人も疎らだった。

ある時大小ある遺跡のひとつを散策していた。
すると、穏やかな微笑みをたたえた物売りの老人が、
胡弓を静かに奏でながら、あくまでゆっくりと、
とてもゆっくりと、僕に近づいてきた。

「 これ、買わんかね? 」
随分と安値だった気がする。
その時、熱でやられながらも、閃いた!

「 おじいちゃん、これは要らない、ごめん 」
「 でも倍払うからお願い聞いてくれる? 」
「 ここを散歩するから、僕の少し後をその胡弓を弾いて付いてきてくれるかな? 」

にっこり笑ったおじいちゃんは、
「 ええよ 」 と。

その遺跡には誰もいない。
日本だったら盛大な蝉時雨が聞こえるのだろう、、
けれどもここには何の気配もない。
それどころか風の音も、鳥のさえずりも、何もない。
凶器の暑さで僕ら以外の全部が止まってしまったみたいに、、

あるのはただ暑さでむせ返る自分の吐息と、
彼が奏でる胡弓の優しい響き以外何もない。
そして、ただ暑い。

リゾートのインフィニティプールで飲む冷えた
シャンパンなんか目じゃない。
自分にとっては最高に贅沢で、そして白日夢を見ているが如く、
幻想的な体験だった。
けど、暑かった、、、

今となっては現実か妄想か、自分でも分からないほど、
霞の中の古い記憶だ。
そんな想いを呼び起こしてくれる日本の猛暑も悪くない、、って
思ったりした今日この頃、、、


入道雲と蓮  シュムリアップの暑い想い出、、、

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